現在(いま)も変わらぬ光学系 -鏡筒メンテナンス2021年6月のまとめ-
先週公開したメンテブログの番外編「シーズン・イン・ザ・カビ」。
まだまだ続く梅雨シーズンですが、光学機器の管理、保管状況は問題ないでしょうか??
もし、長年眠ってしまっている機材がある!って方はこの機会にチェックされてみてください。番外編の後半では保管方法などもご紹介しておりますので、参考にしていただければと思います。
さて、
今月も様々な鏡筒のメンテナンスを行いました。少しですがその内容をご紹介させていただきます。一部の機材マニアの方に向けたニッチな連載です。
ご興味のある方のみ(?)お読みいただければ幸いです。
☆ヨシカワ光器 YK-200
ニュートン反射の名機と名高い、ヨシカワ光器"YK-200"。
口径は余裕の"20cm"!なんといっても"F/8"という無理のない設計!
現行機ではすっかり見かけなくなった眼視最強スペック。
長年の使用により鏡面の劣化が目立っていました。
今回の主訴である"反射鏡再メッキ"の様子をお伝えします。
「主鏡裏からコンニチワ!!」
一度ヒトの顔に見えだしたら止まらない現象。
主鏡セルから主鏡を取り外します。
予想よりも劣化(薄膜)が進んでいました。
メッキの状態を確認する際には、裏面からライトなどで照射すると一目瞭然。
同じ時代を駆け抜けてきた"相方さん"。
斜鏡も同様の状態でした。
再メッキは専門業者にて、劣化膜を剥離した後、新たに成膜を施します。
主鏡再メッキ後。
裏面照射してもこの通り。
反射膜が光を通しません。
斜鏡もこの通り。
硝材に腐食や劣化はみられずメッキのノリは良好です。
通常の再メッキの仕様は"アルミニウム反射成膜+シリコン保護膜"。
"Al蒸着面"にうすーく"シリコン保護膜"をコーティングするわけです。
なので略さずに言うと"再メッキコーティング"となります。
可視光平均で"85%以上"の反射率です。
このあと、鏡筒への組み込みと光軸調整を行いましたが、星像は鳥肌立つほどキレッキレ。これからの惑星シーズンが楽しみとなります!
☆エミール・ブッシュ 7cm屈折 x2セット
今月もヴィンテージ鏡筒のご依頼をいただきました。
"Emil・Busch(エミール・ブッシュ)"ドイツの光学機器メーカー。
オーナーさん曰く、残念ながら詳しい年代や出所はご不明だそうです。
「当時の情報はかなり少ないのか・・・、
妄想だけが膨らむぜ・・・。」
同タイプ2本まとめてのご依頼でしたので詳しくみていきましょう!!
対物レンズ飾り環側面と接眼部周りに"EMIL BUSCH A-G. RATHENOW"
"ラテノウ"はエミール・ブッシュが所在したドイツの地名。
真鍮パーツに刻まれたローレットとフォントが醸し出すアンティーク感。
この接眼パーツ、
24.5mmアイピース入るけどちょっとブカブカ。
てっきりツアイスサイズかと思いきや"内径25mm"。
すり割りが広がったわけでもなさそうですが。。
ドローチューブの刻印。
"Tenno Schmidt Shoten"
?????
もう一方には、
"Shimaazu Seisakusho Ltd Kyoto"
ん!?
シマヅセイサクショ??
島津製作所が今で言うところの国内輸入代理をやっていたようですね。
(エミール・ブッシュ_島津でネット検索してみると少し当時の情報が)
そして対物レンズ。
2枚玉!!
錫箔分離!!
スバラシイ!!
一方の対物レンズにはカビやキズの付着が目立っています。できるところまでやってみましょう。
もう一方は比較的キレイな状態まで回復しました。
中央に変質がみられますがニュートンリングも確認できます。
随所にちりばめられた工芸作品のようなパーツ。
2枚玉色消しレンズの先駆け。何よりもこの存在感。
仕事ながら貴重な経験をさせて頂きました!
一説には対物レンズはカールツアイス社提供との情報もありますが定かではありません。
年代で言えばおそらく大正とか昭和の初期とかでしょうか??
お詳しい方、ぜひ情報提供をお願いします!
まとめ
と、今回は"ちょっと昔の鏡筒"と、"かなり昔の鏡筒"、2種類を紹介いたしました。
時代は違うものの、どちらの鏡筒もひとつの時代を創ったことは間違いなく、この時代にすでに完成していた光学系に対し、万感の思いでメンテナンス作業にあたりました。
感想は、
「ヴィンテージ鏡筒の実に奥深きこと。。」
ヴィンテージ鏡筒から最近の鏡筒まで。
基本的にメーカー問わず対応いたします。
鏡筒メンテナンスのご相談やお問い合わせは、
最後までご覧いただきありがとうございます!
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